理事長所信

一般社団法人十日町青年会議所

第67代理事長 重野 敦志

理事長所信
一般社団法人十日町青年会議所
第67代理事長 重野 敦志

【スローガン】
轟け!越後妻有!

【基本理念】
ストーリーを語り、共感を得よう!

【はじめに】

 私が高校生まで過ごしたこの地域は現在の合併後の十日町市ではなく旧十日町市でした。当時、我々は里山に囲まれた自然豊かで、旧十日町市、旧川西町、旧中里村、津南町地域から成る、この地域を妻有と呼んでいました。この地域は日本一の長さを誇る信濃川中流域に開けた盆地を中心に栄えた地域です。冬になるとしんしんと降る重い雪が積雪約3mにもなる厳しい世界となり、春になるとその雪が溶け、大地に恵みを与え、秋には我々の特産物の米を育てる素晴らしい糧となります。

 1999年より政府主導で行われた市町村大合併がはじまり、2005年の新設合併で現在の十日町市になり、雇用、教育、産業、医療、福祉など住民の生活・活動全般にわたって総合的な行政サービスの提供が可能となり、住民の生活利便性が向上しました。この頃から十日町市と津南町地域を合わせて越後妻有と呼ばれるようになりました。

 また、大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ2000が開催され世界各地から沢山の観光客がこの里山を舞台にした国際芸術祭に足を運んでくれました。回数を重ねるごとに大地の芸術祭の人気や知名度は上昇の一途をたどっています。しかし世間一般に越後妻有という認知度は上がっているといえるでしょうか。はじめてこの名を見て、新潟県のどの地域かわかる人はどれくらいいるでしょうか。我々、十日町青年会議所(以下JCI十日町)は今日まで十日町市、津南町で活動する団体として越後妻有の様々な地域課題を解決するために果敢に挑んでまいりました。今年度、我々がこの地域を意識しながら行動を一つ一つ積み重ねることで更に越後妻有の認知度を上げたいと考えています。具体的にどうするか。ストーリーを語り、共感を得ることです。ストーリーとは付加価値の創造を意味します。情報を誰でも簡単に手に入れることができる社会で、すでにあるものの価値を改めて見出しJCI十日町がこの地の魅力を新たに創造し伝えることで越後妻有の名を轟かせることができます。

【越後妻有のストーリー】

 2008年の1億2808万人をピークに日本の人口減少が始まりました。日本全国で起こっていることは、都道府県でも起こり、もちろん各市町村でも発生しています。この約20年間、人口減少に対して様々なアイデアや政策などがあったと思いますが、抜本的な解決策には至っておりません。しかしながら、私たちは抗う策を日々模索しています。

 昨今、様々な種類の事業構築においてストーリー性を付加することが着目されています。人口減少に対してもストーリー性を付加した解決策を考えてみてはどうでしょうか。方法としては、自分たちのストーリーを取り入れた解決策(事業)を構築し、そこに地域のストーリーを加えることで共感を得てもらうというものです。身近な例でいえば、日本遺産が近年注目されています。これは事業の方向性として地域に点在する文化財の把握とストーリーによるパッケージ化とあります。従来の文化財行政は個々の遺産を「点」として指定・保存することで伝えようとしましたが、「保存」を重視するあまり、地域の住民に魅力が行き届きませんでした。反対に日本遺産とは点在する遺産を「面」として活用・発信を重視し、パッケージ化した文化財群を一体的にPRし地域のブランド化・アイデンティティの再確認を促進することで付加価値を与え、観光客を呼び込みます。2020年に十日町市の「究極の雪国とおかまち-真説!豪雪地ものがたり-」が日本遺産に認定され、行政や各団体がこの地のストーリーを知ってもらうために注力されています。新潟県内の認定ストーリーは3つあり、その中で地域型と呼ばれ単一の市町村内でストーリーが完結するのは県内唯一です。JCI十日町でもこの希少な日本遺産を用いてこの地域の魅力発信するためにストーリーを取り入れた事業を考える必要があります。

 この事業を通じて、個々の想いが小さな点から長い線へと繋がって越後妻有の魅力あるストーリーが完成し、地域住民やこれから訪れる人々に共感を与えることで、この地域がさらに認知され発展することを目指します。

【会員拡大と先輩諸氏とのストーリー】

 会員拡大は全ての団体で必要不可欠なことです。各事業所においても採用は重要です。社員がいなければ会社として事業承継もできないし、成長も難しいでしょう。それはJCIでも同様のことがいえます。この地域社会に大きなインパクトを与えるような運動を起こしたいのであれば、会員拡大を全面的に取り組まなければなりません。

 JCIに入会するメリットはどこにあるのでしょうか。JCIは20歳から40歳までの年代で形成されている組織です。人は慣れた環境の中に身を置く傾向にあります。同じ職種、同じ年代そして気の合う仲間といれば心地良いです。しかし我々は異業種の集まりで生まれた地域、職種そして環境すべてが異なった青年の集まりで一人一人が異なったストーリーを持つ多種多様な団体です。この中で同じ志を持つ同志と切磋琢磨し活動することで越後妻有の明るい豊かな社会を創る糧となります。そして40歳を過ぎた人生においてどんな道を歩もうともこの経験が必ず活きてきます。

 また、昨今のコロナウィルス感染症状況下において先輩方と交流する機会が失われていました。近年入会歴の浅いメンバーが多い中、先輩諸氏との交流の場を設けることは経験などのストーリーを聞き学ぶことができ、現役会員にとって素晴らしい時間となるため会員の資質向上に繋がります。

【防災・減災意識においてのストーリー】

 この越後妻有地域は2004年に発生した新潟県中越地震、2011年の新潟・福島豪雨そして2019年の東日本台風と多種多様な自然災害にあってきました。「防災」とはいつ起きるか分からない災害に対して、事前に心構えをしておくことです。 防災には、被害を少なくするものから未然に防げるものなど色々あります。また、災害が起きる前提のもと、その被害を最小限におさえることが「減災」の考え方です。

 2014年にJCI十日町と社会福祉法人十日町市社会福祉協議会様、特定非営利活動法人セーフティネットぼうさい様の3団体で締結した越後妻有防災ネットワーク協議会は県内でも数少ない防災・減災意識向上を目的とする複合団体です。毎年開催される越後妻有防災プログラムにおいて地域の子ども達へ出前授業をし、体験を通じて普段なかなか考える機会のない防災に対しての意識をもってもらうことができ、家庭で保護者と考える場を設け、学びを共有してもらうことで防災意識の向上を図っています。各学校の避難訓練では設えることが困難な防災体験を実施することで各面から高い評価を得ています。我々は毎年、越後妻有防災ネットワーク協議会での活動を通じて団体間での情報のやり取りと連携の向上に努め、防災意識のストーリーを示し、災害時に一人でも多くの地域住民が的確な行動をとれる地域を目指します。

【わんぱく相撲十日町場所のストーリー】

 その昔、相撲は人間の闘争本能の発露である力くらべや取っ組み合いから発生した伝統あるスポーツで、その年の農作物の収穫を占う祭りの儀式として毎年行われ、天下泰平を祈 念する神事として発展させたことが起源です。

 1980年代に子どもたちの健全育成を目的として、十日町相撲連盟様の自発的な動きにより地域の各小学校へ数多くの土俵が設置され、1985年にわんぱく相撲十日町場所が開催されました。今から約30年前は私もその小学校の土俵で相撲を取り組んだわんぱく力士でした。礼に始まり礼に終わるといった挨拶の大切さと頭と頭をぶつけ合い恐怖心に打ち勝つことのできる「心」を学び、土俵という限られたスペースの中でどうやって目の前の相手を倒すかを考える「技」を学び、四股を踏むことで体と体をぶつけ合ってもぶれない「体」をつくってくれました。相撲を通して「心技体」を学ぶことができ、子どもたちの心身の鍛練、健康の増進を図ることができます。

 近年のわんぱく相撲十日町場所では、新型コロナウィルス感染症蔓延時にもかかわらず、初めて相撲をとる新たなわんぱく力士も参加するようになりました。2023年にわんぱく相撲十日町場所は第38回目を迎えます。わんぱく相撲十日町場所を開催する意味を改めて再確認し子どもたちに心身を鍛錬することの重要さと大人になっても色褪せることのない経験を与えたいと思います。

【結びに】

 私は2019年度に入会し、今年度で5年目を迎えます。2019年度の年賀交換会の時 に「若い我等」を歌いながら前の人の肩に手を架け人間列車のようになった参加者を見て気持ちが高揚し、感動しました。それと同時にJCIという団体を宗教のようであると感じました。なぜそう思ったのか。2009年、私はカナダのトロントで勉強する機会があり海外生活や異文化というものを学びました。海外で当たり前のように聞かれるのは自分の宗教のことです。多くの日本人が「子どもが生まれたときには神社(神道)にお参りするのに、お葬式はお寺(仏教)で行う」いわゆる「神仏習合」という特殊な信仰です。ですからそういった信仰などの文化について考える機会がありませんでした。そして日本というナショナリズムについても考えたことがない。それは私自身が「帰属意識」というものに対して当時非常に無知であり、無意識であったと思います。それが海外生活や異文化に触れ憧れを抱くようになりました。そのため「若い我等」で情熱的な参加者を見て心が揺さぶられ、帰属意識の高いこの会で精進していこうという決心に至ったのです。

 JCIでは20歳から40歳までの限られた時間で「明るい豊かな社会を築く」という共通の目標を基に活動している同志が全国に約43,000名もいます。その結束力のある素晴らしい団体で確固たる帰属意識を持ち活動してきたから「若い我等」で一つになり笑顔になることができるのだと思いました。一人では成し得ることのできない目標も同じ志を持つ仲間となら達成できます。JCI十日町として地域発展のストーリーを描いて会員同士で共有し、一丸となって運動を展開する事で越後妻有の名を日本全国に轟かせます。

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